『落陽』~環俊平
茜の空は琥珀の息をついて、最後の朱に染まった。
沈みゆく夕日は、束の間の休息につく。
明日を生きたくなるような橙色に背中を押されて
風の音が「頑張れよ」と聞こえた気がする。
元気が出たら、無性に卵掛けごはんが食べたくなった。
里心がついた、ってやつ?
俺は今の自分が案外、気に入ってる。
子供の頃ほど純粋ではなくなったし、完璧が最上とも思わなくなった。
きっと、ずるくもなって、嘘つきにもなっている。
けれど、人って、そういうものだろう?
自分に正直になったら、人に、やさしくなった。
不完全の面白味を知ったら、短所を個性に思えるようになった。
強がる自分を弱いと認められる強さを持ったら、人に甘える術を知った。
人は支えあっていくもんだってこと、よぅく解った。
黄昏時を紫の帳が染め変える。
原点回帰。いつか、お前と見た天に一番星を探す。
これまでの記憶のポケットが一つ二つと開くたび、胸に迫るものがある。
泣きたくて泣くんじゃないけど、泣けてくるんだなぁ……。